文京区×東京メトロ免許証返納キャンペーン
令和元年に「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」が取りまとめられてから、特に運転に不安を感じる高齢者が免許を返納しやすい環境を整える取り組みが進められている。
高齢ドライバーはどのような視点で運転の継続・不継続を判断すれば良いのだろうか。
交通安全運動の一環として行われた、文京区と東京メトロの免許証返納キャンペーンについて紹介する。
免許証を返納すると東京メトロ24時間券が2枚もらえる
文京区では、交通安全週間に合わせた令和6年9/21~10/31まで、東京メトロと提携し、免許証返納キャンペーンを行った。
キャンペーン期間中に免許を返納し、文京区土木部管理課交通安全係に申請を行うと、東京メトロ24時間券が2枚もらえる。
このようなキャンペーンは文京区では初の試みとなる。
文京区のクルマ保有率は低い
日本のクルマの保有率は平均して一家に1台程度だ。
そのような中で、東京都のクルマの保有率は一家に0.4台※と少ない。
交通の便が良い文京区では、保有率が0.2台※とさらに低くなり、クルマへの依存度が低いのが特徴だ。
また、丸ノ内線、千代田線、有楽町線、南北線と4線もの東京メトロの路線が通っているのも、このようなキャンペーンに踏み切るきっかけとなった。
「やはり都市部のほうが返納しやすいというのはあると思います。特に文京区は地下鉄やコミュニテイバスの便がよく目的地まで行きやすい。このような背景もあり、免許証返納キャンペーンを行うことを決めました」と橋本さんはいう。
(※軽自動車を除く)
文京区 土木部 管理課 橋本淳一さん
運転免許証返納のきっかけとは
運転免許証は強制的に返納してくださいというわけにはいかない。
周りは促すことはできても、最終的な決定を行うのは保持者本人だ。
では、具体的にどのようなタイミングで返納を考えればいいのだろうか。
「運転中に何かに気付くのが遅れた経験があれば、一歩立ち止まって考えてみるといいかもしれませんが、文京区の返納時のアンケートにおいては、『必要がなくなったから』などの理由が多いです」と橋本さん。
文京区では、今回より多くの方に興味を持ってもらえるように、主に警察署を通して広報を行った。
また、より身近な問題として考えてもらえるよう、高齢の方がよく目を通す文京区の区報にも掲載し、返納のきっかけとなるよう周知に努めた。
環境問題への取り組みの一つとして
この企画の提案を行った東京メトロサステナビリティ推進部では、鉄道というプラットフォームを使い、環境という社会課題に対して何かできないかという思いがあったという。
「例えばクルマでの移動を3回程度メトロに変えるだけで、CO₂に対して、杉の木一本植えるのと同程度の効果があるんです。高齢者の免許証返納キャンペーンは、何か環境保全に寄与したいという思いからご提案させていただきました」と米原さん。
東京メトロ 経営企画本部サステナビリティ推進部 米原善秀さん
東京メトロでは、2024年4月1日から丸ノ内線・南北線で使用する全ての電力を水力発電由来の再生可能エネルギーに置き換え、CO₂排出量ゼロで運行している。
鉄道が環境に優しいことは意外と知られていない。
東京メトロでは「このようなキャンペーンを通じて、環境への配慮の一助にもなれば」という考えだ。
高齢者の外出はとても大切
高齢者の外出は、身体機能を維持し健やかに過ごすためにもとても大切だ。
免許返納とともにその機会を失ってしまうのはあまり良くないといえるだろう。
今回、運転免許証返納の記念品として、東京メトロ24時間券2枚としたのも、免許を返納しても外出の機会を持ってほしいという思いがつまっている。
免許の返納となれば多くの方が身近な方に相談するだろう。
2枚の乗車券があれば「東京メトロでどこに行こうか」と相談ができ、外出のきっかけとなる。
高齢者の運転免許証返納は、個人のライフスタイルに直結した難しい問題だ。
文京区としては、だからこそポジティブな側面を見つけ、交通安全運動の一環として進めていきたい考えだ。
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