
調布市子ども交通教室
内閣府の令和5年版交通安全白書によると、交通事故全体の死亡重傷事故件数は減少傾向だが、自転車関連の件数の割合は、横ばいから微増となっている。
そのような背景を受けて、令和6年11月からは、自転車運転中にスマートフォン等を使用する「ながら運転」の罰則が強化されるなど、自転車の運転に対するルールが厳しくなった。
各市区町村は自転車の交通ルールの啓発に、どのように取り組んでいるのだろうか。
子どもの頃から交通ルールや自転車の正しい乗り方を身につけることができる、調布子ども交通教室ついて紹介する。
横断歩道、踏切、警報機などがある公道を再現したコース
調布子ども交通教室は昭和50年代からこの場所にある。
土地としての利用の仕方が限られる、高速道路の高架下というスペースに作られているのが特徴だ。
高架下という特性上、雨天時も小雨であれば問題なく遊べるのが良い点だ。
教室の道路上には一時停止の路面標示、信号機、踏切などがあり、公道で自転車運転を行うための練習ができる。
教室といっても教習所のように自転車の運転を習うわけではなく、このような設備の中で来室者が自主的に実際の公道で走ることを想定して自転車の練習をすることを目的としている。
補助輪で自転車練習をする未就学児から、自転車で出かけるようになる小学校3年生程度までを主な対象としている。






優しい声かけでほめて伸ばしたい
調布市子ども交通教室に来る子どもは、基本的に遊びの一環で交通安全教育を学びに来ている。
そのため「できるだけ優しい声かけをし、ほめて伸ばすようにしている」と指導員の水崎さんは話す。
しかし、年齢の大きい子ほどパワフルな遊び方、乗り方になってしまうことも少なくない。
そのような時は「今日は一番お兄ちゃんだからお手本なんだよ」など声掛けを行うと、指導員の西新さんは言う。
自転車に慣れていない子が委縮しないように、元気のいい子には自主的にルールを守れるように導くのが指導員の役割だ。
定期的に通っている子に「だんだん乗れるようになってきたね」と声かけをしているのも印象的だった。

交通指導員の西新さんと水崎さん
DVD上映で考えながら交通安全について学ぶ
調布市子ども交通教室では、交通安全啓発のためにDVD上映会も行っている。
本田技研工業のキャラクター「できるにゃん」がナビゲーターだ。
具体的にどのような行為が危険となるのか、子どもの目線で考えさせるストーリー展開で、間には水崎さんの質問と丁寧な解説が入る。
例えば、クルマを自宅の駐車場に停める保護者、曲がり角から曲がってくる自転車からどう見えているかというのは、小さい子どもには想像しにくい。
DVDの映像を実際観ながらシミュレーションすることで、危険な思いをすることなく、相手からの見え方を想像する力が身につく。
動画に慣れているこの世代の子どもたちが飽きないような工夫をしながら、DVD上映を行っているのも特徴だ。



調布市内の交通安全への取り組み
近年自転車の乗り方についてフォーカスされることが多くなったが、調布警察署が各小学校の校庭で行っている「自転車実技講習会」も、学校からの申し込みが絶えない。
例えばペダルがない子ども用のキックバイクの登場によって、そのまま補助輪なしで自転車に移行するという子どもも多いだろう。
「ブレーキの使い方を知らないまま自転車に乗ることになってしまうので、事故の原因になってしまうこともあります」と手塚さん。
そのような時は、講習会のような場所で全力でブレーキをかけるなどして、感覚をつかむと良いという。
また学校の校庭を使った講習会だけでなく、こちらの教室を使って、学校単位でルールを学ぶことも可能だ。
「こちらの教室を使って講習会を行いたいと、学校単位で申し込みいただくケースもあります」と、崎間さん。
公道をすぐ走るのではなく、シミュレーションとしてこのような場所で遊び感覚で公道を走ることを想定して運転することで、運転技術と交通ルールを守る知識が身につく。
子どもたちの自転車利用は遊びから交通手段へと変わっていき、安全に乗るには、自転車の操作技術、正しい運転方法、交通ルールの知識が必要である。これらは繰り返しの練習で少しずつ身につくものである。
子どもの頃からの習慣づけは、大人になってからの交通安全意識も高め、生涯身を守ることにつながる。
指導員の方々も、子どもたちが自然と安全な運転を身につけられるよう指導していきたいと考えており、大切なのは子どもたち自身が交通場面で安全に行動できる力を育むことで、そのために、この施設で質の高い指導を続けていきたい姿勢である。
安全に自転車に乗れる場所が減っている中で、調布市ではこのような施設を活用し、さらなる交通安全の啓発を行いたい考えだ。

調布市 都市整備部 交通対策課 崎間猛さん 手塚陽介さん

交通指導員の方が必要な部分を切り抜き、指導の参考にしてくださっていたSJ!
アストクリエイティブで執筆、編集しています! 嬉しいご縁をありがとうございました。
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